アート作品のあるオフィスとは、どんな様子でしょうか。今年4月、三井不動産ベンチャー共創事業部の会議室に絵画4点が導入されました。作品をレンタルするに至った経緯や、どのように作品を選んだのか、またアーティストはどのような想いで描いているのか……など、作者であるMITOSさんと三井不動産の担当者のお二人にお話しを伺いました。

今回の対談者

上窪洋平さん

三井不動産株式会社ベンチャー共創事業部共創事業グループに所属。CVC事業、新規事業開発に従事。リテール領域、文化芸術領域での事業創造に関わる。

MITOSさん

油彩画家。1985年愛知県出身。2008年、名古屋造形大学美術学科洋画コース卒業。2016年、豊田市文化振興財団賞受賞。真摯な制作姿勢に裏付けされたペインティング作品の多くは、歴史的な美術、音楽や文学に着想を得ており、独特の線描と色彩感覚に現れている。2022年に清須市はるひ絵画トリエンナーレ審査委員賞を受賞し、「アーティストシリーズVol.97 MITOS展」を行なっている。

創造性のある仕事だからこそアートの力を借りたい

ーーまず、アートを導入することになったきっかけを教えてください。

三井不動産 上窪さん(以下上窪 敬称略):元々は、壁にフェイクグリーンを飾っていたんですが、ややインパクトに欠けるなと感じていました。会議室の利用者や会議室の前を通る社員の創造性を刺激するようなアート作品を飾りたいと思い、アートをレンタルすることに決めたんです。

ーーこの会議室に導入すると決めた理由はあるのでしょうか?

上窪:ここは新規事業の開発なども進めていくベンチャー共創事業部の専用の会議室で、「新しいことに挑戦する」というミッションがあるので、創造的な場にしたいという思いがありました。物理的に創造性をもたらすためにアートの力を借りたいと考えたんです。アート作品がオフィス空間に与える影響を実際に感じたかったのもあります。私の所属する部門専用の会議室なので、内装などスムーズに意思決定できるということも理由のひとつです。

ーー数あるアーティストの中から、MITOSさんの作品を選択されましたね。作品を選ぶ上で決め手になったポイントや、逆に悩んだことなどはありましたか。

上窪:アート作品一覧のカタログを一緒に見ながら検討していた弊社社員が直感でMITOSさんの作品に関心を持ち、私もひと目見てとても気に入りました。Art Technologiesさんに相談したところ、色を指定してオーダーすることも可能ということでしたので、オフィスに溶け込み過ぎない明るい色が良いと伝えて、MITOSさんに新作を制作いただきました。

ーー実際に作品をご覧になった印象はいかがですか?

上窪:最初に出来上がったばかりの作品を見たとき、その色の美しさにとても心を惹かれました。生命力を感じる作品だと思います。

《花 -青》2022《花 -黄》2022

ーー社員の方々の反応はありましたか。

上窪:やはり室内の雰囲気がガラッと変わったのでさまざまな声がありましたね。会議室の雰囲気が和らいだという印象を持っている社員もいれば、作品を選ぶ段階から携わってくれていた社員は、「自分がいいと思ったものがオフィスにあるのは心地が良いです」と話していました。

ーーオフィスにアートがあることで社員さんの心境に変化があるのは嬉しいですね。

上窪:「メンテナンスがいらないから楽」といった率直な感想もあり、アートに対する見方が人それぞれ違うのも面白いところでした。他にも「油絵の匂いから昔の学校の美術室を思い出す」という意見や、「アートが見える席に座るようになった」というコメントが寄せられています。

描いているのは癖の集積。残り続けるものを作りたい。

上窪さん:MITOSさんはこの作品をどのような想いで描かれているのですか?

MITOS:これは、僕が12年間続けている『花』というシリーズです。花そのものを描いている訳ではなく、絵の具という物質をキャンバスという物質に乗せていく行為の中で、自分のしっくりくるストローク、手の動かし方や癖の集積として描いている作品です。

上窪:癖を排除するのではなく、集積するという点は興味深いですね。私は音楽をやっているのですが、日頃から手癖を排除したいと思っているので逆ですね。また、このシリーズがこの12年間でどう変化してきたのか、また完結する日はくるのか、そんなことも気になります。

MITOS:根底は同じですが、実験を重ねながら制作しているので振り返ると変化してきていますね。筆のタッチもワンパターンではないので、それぞれの作品に合ったストロークを一つ一つ確かめながら作品を作っています。カッコ悪いなと思った線は消してまた描き直したりもします。

上窪:今回は色をオーダーさせていただきましたが、制限がある中で制作をすることについてどう思われますか?

MITOS:作品を作る過程で色を決めてから制作に入るので、自分で決めてもオーダーという形でも特に制限に縛られることはありません。赤色という指定があっても、実は何万種類というバリエーションがあって、その中で「この色だな」というものを見つけてから制作に入ります。

上窪:制作にかかる時間はどのくらいなんでしょうか?

MITOS:手が温まっている状態であれば、このサイズだと2、3日で描き上げる時もあるし、調子が悪い時は一週間近くかかってしまう時もあります。大体30点くらいは同時進行で制作していて、一方の手が止まったら他のものに移ったりします。物としては一点一点独立した作品です。例えば、30点同時に作っていたとしても試行錯誤が多くて、完成しないものもたくさんあります。打率で言うと3割くらいですね。

《花 -緑》2022

上窪:ご自身に厳しいラインを設けているのに驚きました。

MITOS:自分の中ではいい線を積み重ねて描きましたと言葉では言えても、考えている全てが鑑賞者に伝わることはないと思っています。でも、鑑賞者の人生を通して自分の作品が見られる以上は、世の中に出すべき作品はしっかり選定して、いい絵を出すというラインだけはブレないようにしています。

上窪:MITOSさんが制作する上で影響を受けたものはありますか?

MITOS:僕は色彩学という学問に基づいた色の配色に関心があって、ヨハネス・イッテンという学者の色彩論という本に影響を受けています。今も制作の間の時間を使って絵の具や油の関係性を研究しています。色と色の組み合わせや、色の霞みや掠れなど、彼の理論から学んだことが自分の作品にも影響していますね。

上窪:作品は一見情熱的に見えるので、研究者のように緻密な分析をされているのは意外でした。

MITOS:作品に関しては勢いや情熱で描くというより、分析して描くタイプです。作品を見る時は、それぞれの人生経験を通じて見るので感じ方は人それぞれだと思います。ただ、自分だけが気持ち良くなるのではなく、作品として成立するものを作るということは常に意識しています。

もっとオフィスにアートが広がっていくように

ーーMITOSさんの作品に対する真摯な姿勢を知ることができて良かったです。アート作品のレンタルサービスについて、お二人はそれぞれどのように考えていますか?

MITOS:自分はいい作品を描くということに執着しているので、出来上がった作品は独り立ちという風に考えています。作品を企業が活用しやすい形にするとか、コレクターの手に届くようにするというのは、自分にはできないこともあるので、役割分担をはっきりさせてArt Technologiesさんに任せています。元々代表の居松さんが名古屋でギャラリーを経営していた頃からの間柄なので、「作ったあとは任せます」と言えるような信頼ありきでの今の関係性ですね。

上窪:ここ1〜2年でアートに関連するプロジェクトができないかと考えていたのですが、シンプルに今働いているオフィスにもっとアートがあったらいいんじゃないかと思ったんです。パブリックスペースは制約もありますけど、オフィスの中はある程度自由ですからね。でも意外と単純にアートを飾りたいというニーズを満たせる会社が他になかった。アートを企業がサブスクでレンタルできるというのは、まさにピッタリのサービスでしたね。

MITOS:作品を作家からちゃんと買い取ってその後のことにも責任を持ってくれる会社って他にないんです。だから制作活動を続けられますし。レンタル用の絵はレンタル専用の絵であってクオリティは気にしないとなると作家もお客さんもついてこないと思っています。

ーー本気でアーティストを育てながらも、レンタル先の企業に対してはアートによる付加価値をつけていく。アートと企業を繋ぐということが出発点ではあるんですけど、良い作家の良い作品を企業のオフィスにレンタルしてもらうことを広げていきたいですね。

上窪:オフィスにアートが、どんどん広がっていく世界を一緒に作れたらいいなと思っています。

MITOS:これからもいい作品を描き続けていきたいと思います。

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